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2024年08月08日
花火 ~ 永遠なる記憶の中に
「ドン」と静粛と闇にいる人々の心を不意に強くノックする
すると一筋の光の塊が天に向かいまっすぐに駆け上る
ある瞬間まるで不意に持ち手から滑り落ち、粉々に砕け散るガラスのコップのように
瞬光を得た多色ビーズが瞳に残影を残し四方へと飛び散っていく
幾度となく繰り返される五色の光の散乱と消失に
心はいくどとない波に押され瞳だけがその光を追い求め
同調する歓声が大小の躍動するリズムを奏でる
打ち上げ花火を観ると、涙が出るのは私だけだろうか
歓声とともに目頭が熱くなり
その場を逃れられない時に縛られる。
初めて行った神宮の花火でも
本当はうれしいはずなのに
実は闇の中で涙をこらえていたのだ
人は命絶えるとその瞬間に肉体をはなれ、他人の記憶に入っていく
記憶のなかを自由にさまよい、永遠の生を刻んでいく
天を舞う光、闇に浮かぶ光 それを目にした自分に住まう過去の人々の記憶が
開いてしまった心から飛び出す
幼い子が父母とともに眼にした最初の花火
出征を前にしてもう会えないと想い愛する人との花火
これが人生最後になるかもとある老人の花火
涙はその優しくも切ない心の記憶なのかもしれない
そして今がまた次の世代に強く刻まれていくのかもしれない